「勉強しなければならないと分かっているのに勉強する気が起こらない」という状況は、大学受験生なら誰でも体験することである。ただし、あまりにも長く続いて、一ヶ月近く勉強できなかったり、すべてのものごとに対して無気力になってしまう場合には、早めの対策が必要である。予備校生にやる気が起こらなくなるメカニズムは次のようなものである。それは、大学受験を失敗したことによる挫折感、敗北感、傷つきである。子どもの頃は誰でも「野球選手になりたい」「お医者さんになりたい」など、漠然とした夢を持っているものだが、成長するに従って、自分を客観的に見つめ、現実に応じて夢を修正したり、あきらめたりする必要が生じてくる。たとえば「お医者さんになりたい」と考えても、大学受験の合否によってその可能性が制限されてしまう。大学受験という時期は、この「修正」を急激にせまられる時期でもある。また受験期には、偏差値によって優劣や勝敗を強烈に意識させられる。自分の夢をあきらめることや、優劣や勝敗を意識することは、大変な傷つきや苦痛をともなう。こうした苦痛や傷つきをそのまま受け止めるのが難しい時、無気力になってしまったり、目標や目的を見失ってしまう感覚が生じたり、現実から逃避する。自分自身の存在が不確かなものとして感じられるのだ。これを一人で乗り越えていくのはかなり辛い。ゲームやインターネットなどのすべて完結する世界にひたることで、現実逃避が固定化すると、ますます乗り越えることが困難となる。「目標や目的を見失った」と感じた時には、カウンセラーでもよいし、気のおけない友人でもよい、「なぜ自分は大学に行こうとしているのか」「自分の夢は何か」ということを話し合うことが役立つだろう。P君の場合も、カウンセラーと具体的に話し合うことで、自分の夢について、より具体的に考えることができるようになっていった。