団塊世代の定年後の暮らし方についてあれこれ考えてきたが、本章からは家、とくに一戸建て住宅を建て替えたり、徹底してリフォームしたりする場合に焦点を当てて話を進めていきたい。まずは、六十歳を過ぎた今だからこそ建てられる「こだわりの家」について考えてみよう。定年退職してから家を建てる人のなかには、新居を「趣味の家」にしたいと考える人がいる。最近、とくに多いのが「本格的なオーディオルームをつくりたい」とか「シアター・リビングがほしい」というご主人方だ。
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団塊の世代といえば、ビートルズを聴いて育ち、ニューシネマを観ながら映画館でデートした世代である。音や映像に対するこだわりも強い。私自身が自宅に大画面テレビとオーディオ機器を備えたリビングをつくってしまったから、よくわかる。自宅にいながら好きな音楽を大音量で聴き、好きな映画を大画面で観られる喜びは格別だ。一方、陶芸好きな方々は「ろくろが回せて、小さな電気窯を置ける土間がほしい」という。となれば当然、完成した作品を展示する棚も必要だ。自作の皿に手料理を並べて客を接待しようと思えば、キッチンとダイニングルームもそれなりのものでなければならない。こうして趣味を中心とした家のイメージが広がっていく。今でも忘れられないのは、新居設計の打ち合わせの後、妻の目を盗むようにして私にささやいた、あるご主人の顔である。